BSSバンタム級トーナメント決勝、井上尚弥 vs ノニト・ドネア。
会場はさいたまスーパーアリーナに決定、チケットも完売とのこと。
今回は以前、井上尚弥 vs エマニュエル・ロドリゲス戦の予想動記事で紹介した、アメリカのYoutubeチャンネル「Fouts Boxing Theory」で先日リリースされた、井上vsドネア戦の予想動画の内容を要約して紹介します。
前回の井上 vs ロドリゲス戦予想の動画では、井上選手の実力をやや疑問視する内容でしたが、本動画では一転、井上選手の"ストライカー"としての能力を高く評価し、試合も井上選手の勝ちを予想する内容となっています。
ただ一方で、ドネア選手の実力やファイトスタイルから、井上選手にとって危険な相手であるとも指摘しています。
特に序盤で決められず間合いを詰めてくるドネアとの打ち合いになった時には。
動画の内容を大まかにまとめると以下の通り。
井上尚弥vs.ノニト・ドネア - ドネアに勝機は?
ノニト・ドネアは前回の試合とは違った課題を井上尚弥にぶつけてくる
00:00
この動画では、来る井上尚弥 vs ノニト・ドネアの試合を紹介する。
この試合は最後の瞬間まで素晴らしい戦いになるだろう。そしてこの試合は100%の確率でノックアウトで決着がつくはずだ。
ノックアウトで終わらないはずがない。問題は、どちらがどちらをノックアウトで打ち負かすかだ。
00:23
世間の予想では、器用とは言えないが若く、力強く、そしてスピードもある井上尚弥が有利だとされている。
井上のほうがよりフレッシュだからだ。ボクシング好きで、勝ち方がわかっている人たちはそう言っている。
だが、この試合は井上にとって非常に面白いものになるだろう。
なぜなら、前回の試合とは全く違ったスキルが試されるからだ。00:56
前回の試合では、井上は相手とのスペースが上手くコントロールできないという弱点の克服を強いられた。
そして、インサイドで相手との間合いを崩さずにノックアウトしなければならなかったが、井上はそれを見事にやってのけた。相手を引き寄せて間合いを保ち続け、ノックアウトで仕留めたのだ。
01:15
だがノニト・ドネアはロドリゲスとは違った課題を井上にぶつけてくることだろう。
ドネアはそのスキルとファイトスタイルで、井上尚弥を自分の得意の戦法に巻き込んでくるはずだ。01:34
さて、面白い試合になるといったが、ファーストコンタクトでは井上尚弥の方が有利だろう。
試合の序盤について説明したい。大抵の場合、互いにフェイントからスタートする。
井上尚弥は相手との間合いをコントロールできると思うが、ノニト・ドネアは相手との間合いを取る戦い方はしない。ドネアは攻撃的でカウンターパンチを得意とする。
他の有名選手に例えるならジャーマル・チャーロ。
ジャーマル・チャーロ対ブランドン・アダムズの解説を観た人は、肉体的には何倍も優れているはずのチャーロが冴えなく見えた理由はお分かりのはずだ。
(間合いを取るのがうまいアダムスにチャーロは手を焼いた)今度の試合では、井上尚弥が間合いを詰めてくるドネアをコントロールできない可能性もある。
井上尚弥はパンチまでのセットアップが優れているというわけではないが、動きの切り替えが十分速いのでドネアのカウンターの前にワンツーを放つことができるだろう。
ドネアは井上にカウンターを仕掛けることもできるとは思われるが、動きが速すぎて当てるのは難しいだろう。
井上がもし最初のワンツーでノニト・ドネアをノックアウトできなかった場合、いろいろと厄介なことになってくる。
その理由をこれから解説しよう。
ノニト・
ドネア vs ニコラス・ウォータースの試合 ドネアのキャッチ&カウンタースタイルについて
03:24
(2Rの攻防)まず、ニコラス・ウォ-タースがジャブを打つ。
ノニト・ドネアは相手の攻撃を受け止めてから得意のカウンターパンチを打ち込む(キャッチ&カウンター)。この相手の攻撃を受け止めてからカウンターパンチを打ち込むスタイルを私は「ビート」と呼んでいる。
"ビート"では相手が1回体重移動する間に、外側それから内側へと2回体重移動しなくてはならない。
つまり相手のジャブをスリップする1回目の体重移動、そしてドネアがパンチを打ち込むために2回目の体重移動をする。
ジャブを左手のグローブで受け止めていた時も同じ動きになる。
ジャブをよけるか受け止めて、カウンターを打ち込む。04:11
ここで、特大のオーバーハンドパンチ。
若く未熟な井上尚弥はパンチを打つ時フェイントしないので、もしかするとこの攻撃を食らうかもしれない。これがノニト・ドネアの得意とする戦術だ。相手との間合いはお構いなしである。
04:32
ここでは相手が打ってきてたジャブを食らっても引き離し、体重移動している。ここでドネアの左足に注目。
まさに体重移動のお手本といった感じで、マイキー・ガルシアが体幹の弱さと腹筋のなさを補うため右手に体重を移動させる時のように、左足を踏み込んで体重を右足に移している。右足に体重を移してから左足に移すことで、右手に体重がかかる(だから強烈なパンチが打ち込める)。
アミール・カーンなど、この戦術を使う選手は他にもいる。
体重移動をコントロールするようなものだが、これは相手に対し外側の位置から内側にスリップする戦術ととても良く似ている。
しかし腰を回さないといけない。ステップを踏みながら、腰を真ん中の位置から右足の方に傾け、右手でパンチしているのが見えるかと思う。
これが基本的な動きだが、パンチにどれだけ威力を込めたいか、どれだけスピードをつけたいかによってその長さは長くなったり短くなったりする。これは体重移動がすべてである。
ドネアはジャブを打たれたにもかかわらず、とても上手く右手でカウンターを(ウォータースの)頭にかましている。06:46
ここまで見てきたら次に何が起こるかはわかるだろう。
またまたカウンター。また頭に向かってカウンター(が避けられる)。
だが、ウォータースはどうやらこのテクニックを使うには速すぎる相手のようだ。
井上尚弥はニコラス・ウォータースより技術的に上だと思われる(だからより当てづらいということか)。
インサイ
ドでもドネアはテクニックを発揮する。ウォータースのようなディフェンス力のない井上にとって危険
7:15
そして、これは珍しくドネアが間合いを取っているように見える場面。右手を隠してからパンチ。
だがドネアは基本的に間合いを取ろうとすることはほぼない。7:25
そしてこのシーン。
ドネアはパンチを受け崩れ落ちてしまったが、とても興味深い場面だ。
ここでのドネアの間合いの取り方について解説したい。7:35
ここでドネアが前に出てパンチを打ちに来る。
左手でパンチするまえに、ドネアは一旦スリップしている。インサイドで戦うチャンスを作っているわけだ。
このポジションで、ドネアは非常にうまく手と体をコントロールできる。
これがドネアのテクニックだ。ドネアはインサイドのポジションで非常に良い戦いぶりをする。
7:57
またここでもフックを仕掛ける。ドネアはフックを打ちこんでもバランスを崩して相手に対するコントロールを失うことはない。8:13
ウォータースの最初の攻撃を切り抜けた後、ドネアは相手との距離を縮めインサイドで戦う。
ドネアは相手に多大なプレッシャーをかけている。8:28
ドネアはウォータースに左フックを打つが、ほぼブロックされている。防御力はニコラス・ウォータースは井上尚弥よりも上だ。
そんな相手にドネアはパンチしている(相手が井上選手ならより当たりやすいということか)。ドネアの左フックが強いのはご存知の通り。
8:46
またここで良い左パンチ。
インサイドでの素晴らしい戦いぶり。だがドネアはウォータースをあっと言わせるようなパワーは持ち合わせていなかった。
トレーニングのおかげか、サイズの割にはしっかりした体をしているが。9:09
まだここでも、ドネアはインサイドからパンチを打ち込んでいる。この場面にも注目したい。この強烈な左フックを見てほしい。
これはブロックされると思うが…やっぱりウォータースはブロックした。ノニト・ドネアがこのフックを打ち込むときの全体を見てほしい。
いかにうまく、インサイドで相手と密着しながら戦っているかが見て取れるだろう。これは井上尚弥にとって大きな難関になる。
なぜなら井上尚弥はガードの手が上の位置にないからだ。9:40
ここでウォータースがパンチをブロックしているのがわかるだろう。
そしてウォータースは次の左フックで打ちのめされる。
決まった!ウォータースはよろめいているが、ここで運よくラウンド終了。
9:52
ここで打たれたときのウォータースの手の位置に注目。両肩も、右のグローブも上がっている。
このパンチを受けているときも、しっかりとディフェンス態勢なのだ。
パンチの衝撃を受けているにもかかわらずだ。
(暗に井上選手がウォータースよりもディフェンスが甘いことを言っている)ノニト・ドネアをインサイドに立たせたら危険!
井上尚弥に密着しながら、強烈なパンチを何発も放ってくるだろう。
これは井上にとって非常に危険。
ロドリゲス戦の1Rで井上がドネアの得意なパンチを受けた場面について
10:50
次は井上の動画を観てみよう。
井上がパンチを受けるときの両手の位置を見てくれ。ノニト・ドネアがカウンターすることが多いタイミングはさっき御覧いただいた通りだ。
完全に体重移動した後に、キャッチしてカウンターというスタイル。11:07
ここで見られるように、ロドリゲスのジャブが来たけれど井上尚弥の右手はというと下がっている。
そしてロドリゲスから左フックを食らう(ロドリゲスが左に体重が移動しきったところから左フックを打ち込んでいる)。
この通り。これはまさにノニト・ドネア戦で井上が対処しなくてはならないタイミングだ。
ノニト・ドネアはこれまでのキャリアでずっとこのタイミングを訓練してきた。
これがノニト・ドネアの唯一の強みである。ノニト・ドネアのトレーニングを見たことがない人に言っておくけど、ドネアはサンドバッグを相手にものすごいテクニックを発揮する。
あれは信じられなきくらいすごいから、ドネアのトレーニングの動画を見てみることをおすすめする。※下記動画参照11:45
ここで井上尚弥の様子を見ると、フェイントもせず単調だ。少し動いてはいるけれど、ほんのわずかでしかない。
ロドリゲスのポジションを崩すほどは動いていない。ガードからジャブに転じたときの手の位置に注目。
顎をブロックするために肩を使うでもなく、右のグローブは体から離れているだけでなく顎からも離れている。井上が体重移動を終えても手は上の位置にこない。
これはノニト・ドネアと戦うにあたって非常に問題になる。
ドネアは受け止めて、カウンターというスタイルで、カウンターを狙ってくる。12:24
ドネアがこのジャブの外側にスリップすることを想像してもらいたい。
ジャブが来ると、外側にスリップして右で井上の頭を狙ってくる。いかにドネアにとってパンチが打ちやすい状況かよく分かるだろう。
特にボディを狙ったジャブの場合はだ。12:39
お互い接近してパンチを打ちあっているとき、ロドリゲスはパンチを受けていても手を上げているが、井上の右手はというと腰のあたり。
左手もディフェンスできるようなポジションの近くにはない。ここで問題なのは、まず井上がパンチのセットアップがそこまでうまくないということ。
フェイントをしないし、たくさん問題がある。積極的にガードもしないが、パンチの強さはある。
問題なのは、井上が自分より試合のこうした面で少し優れた相手と戦わなければならないということだ。まさにこの面では、ノニト・ドネアは井上尚弥より格上だ。
ただし、井上尚弥のほうが打撃は強いし、テクニックも上だ。
そして少なくとも、序盤の戦いでは井上のほうがかなりスピードでも上回るだろう。13:47
井上はパンチを打った後、バランスを崩してしまう。
これではカウンターを受けやすい。13:54
ここでもまた左手の位置に注目してほしい。
もしここで右を受け止められて左のカウンターが来たら、更には右パンチまで打たれてしまったら…14:02
井上尚弥は両手を下ろしたまま接近して、インサイドにパンチを数発放つ。
まさにこれがノニト・ドネアがパンチを打ってくるであろうタイミング。
受け止めて、次のカウンター。
今度の試合は井上にとって最後まで厳しい戦いになる
おそらく今度の試合は(井上にとって)最後の瞬間まで難しいものになる。
井上が勝つ可能性は高い。
だが、井上にとってドネア戦は容易な戦いだとはいえない。ニコラス・ウォータース戦以来、ドネアは隙を見せ続けていたように思う。
あの「レイジング・ブル」、ダルチニアンを倒した男とは思えない貧弱ぶりだった。ダルチニアン、あの人はいいね。
この試合が終わったらまた見たいね。あのドネアにとって最も重大な勝利であった試合の時でさえ、いろいろと問題点があった。
フェルナンド・モンティエル戦の恐るべきキャッチ&カウンタースタイルのノックアウトは素晴らしかったけどね。それでも、やっぱり今度の試合は井上尚弥が勝つと思う。
だがノニト・ドネアも侮れない。ドネアが勝利するには、インサイドに入って、最初からボディを狙っていった方がいい。
なぜなら井上はたくさんパンチを打つためガードが緩く、コンパクトではないので、フックをボディに当てるチャンスはあるからだ。特に、井上はパンチまでのセットアップがないから、自分がドネアの立場だったらそうするだろう。
井上尚弥に対しては、ドネアに対する間合いの取り方を学び取り、ジャブも間合いを測るためでもなく、フェイントとして相手の動きを探るためにアウトサイドで効果的に使ってドネアのバランスを崩し続けてほしい。
リゴンドウ戦では、リゴンドウはドネアをいとも簡単に倒してしまった。なぜならドネアは非常にバランスを崩しやすいからだ。きっと井上尚弥はあの試合のような最高のパンチを打ってくれるか、一番簡単な方法で倒してしまうだろう。
井上が試合を決める非常に良い一撃を持っていることは知っての通り。
特に井上が普段と違った戦いをする必要があるとは言えない。
一撃で倒せるかもしれない。井上尚弥が勝つと思っているが、ドネアが勝っても驚きはしない。
井上の未熟さを考えるとなおさらだ。
インサイドに入って、パンチを打って。だが井上のパンチは非常に強い。
井上は素晴らしい技術を持った、磨かれたストライカーだ。「ストライカー」と「ボクサー」の比較は非常に面白いテーマだ。
「ブロウラー(喧嘩屋)」については考えない。
ボクシングは喧嘩じゃないから。とても磨きのかかったストライカーであるというのは井上の動画を観てきた人にとっては非常に面白く感じるだろう。
井上のスパーリングを見てみるといい。※下記動画参照
サイズの大きい相手は、初めのうちは井上が小さいからといって遊び半分で挑むのだけれど、それから井上に対してプレッシャーをかけるようになっていき、技を見せつけるようになってくる。すると突然、井上が強烈なパンチを繰り出し始めるんだ!
倒されてしまうぐらい強烈にね。倒されて、相手は頭脳戦で上回ろうということをやめてしまう。
これが井上が厳しいスパーリング練習を乗り越えるための作戦なんだ。
ただただパンチを見せつける。自分のほうがいい選手だとか、認識能力が優れているとか、そんなことにはこだわらない。
自分には強い打撃があるんだ。
今まで見てきた試合の中で、井上にはそうした気概を感じた。ただしサウスポーを相手にするときは別。
vs パヤノでは非常にいい戦いをした。
パンチまでの持っていき方が、あの試合では非常に良かった。右利きの選手を相手にしているときは技術的な能力、ボクシングにおけるIQといった面では標準以下だと思うが、今回の試合は井上が勝つと予想している。
とにかく、井上の選手としての成長が見られそうな今度の試合は楽しみだ。
終りに
<参考動画>
ノニトドネアのトレーニング風景(サンドバッグ)
井上尚弥 vs ジェネシス・シルバニア 3Rのエギジビジョンマッチ
短くまとめると、ドネア得意のキャッチ&カウンターパンチへの対応、インサイドでの打ち合いの対応が井上選手に求められるとのこと。
オッズでは大きな差をつけて井上選手が人気ですがどうなるでしょうか?
井上尚弥 | ノニト・ドネア | 引分け |
---|---|---|
1.07 | 8.0 | 25.0 |
参照:betfair.com